睡眠するために

この時代、アルコールや大麻(マリワナ、ハシッシュなどとも呼ばれます)などが眠り薬として用いられてきました。


これらの植物は19世紀の終り頃から最も広く用いられた眠り薬でしたが、そのなかのあるものは今日なお世界の多くの揚所で用いられています。


しかしこれらの植物に含まれる活性物質が明らかになったのは、布団 羽毛のように極く最近のことです。


いろいろな眠り薬には比較的少量のアルカロイドが含まれていて、これが眠りを起こすのです。


ケシは勿論オピウム・アルカイド、殊にモルフィンとコデインを含んでいます。


マンダラゲはヒヨスチン、アトロピン、スコポラミンの複合したものを含んでいます。


これらの物質は今なお眠り薬のなかに使われています。


1805年にフレデリック・セツルネルはアヘンの抽出物から活性物質を単離し、イヌを容易に眠らせることを発見し、それを眠りと夢の神、モルフェウス(ローマ神話ではヒプノス)にちなんでモルフィンと名付けました。


1870年代のロシヤの社会を描写しているトルストイの『アンナ・カレーニナ』にはアヘンやモルフィンがたくさん出てきます。

・・・

アンナは自分の部屋にもどると、グラスをとって、モルヒネが主成分になっている薬を幾滴かその中へたらした。


それから、それをぐっと飲み干すと、しばらくじっとすわっていたが、やがて落ち着いた明るい気分になって、寝室へはいって行った。


・・・

ギリシャの眠り薬

羽毛 フトンなどなかった紀元1世紀頃に、ケシの汁から比較的純粋なアヘンを作製する方法が記述されています。


ケシの汁は、ローマ人、ギリシャ人、そしておそらくエジプト人によって紀元前何百年も前から宗教儀式に使用されていたようです。


マンダラゲもやはり、ギリシャ.ローマの医師によって催眠と麻酔の性質があることが認められていたそうです。


紀元前300年にギリシャの医師、テオフラストスが不眠にマンダラゲを処方しています。


ヒヨスも古代ギリシャの医師によって催眠薬として広く用いられていたようです。


レタスから出るミルク状の液はしばしば眠らせるために処方されていました。


ガレノス(古代ギリシャの医学者)は、眠りの処方にマンダラゲの皮とヒヨスの種とアヘンをレタスの汁にまぜたものを推賞していました。


中世からルネッサンスにかけても、基本的には同じ成分が用いられていました。


混ぜ方を変えたり、アルコールを混ぜたりしていくつかのバリエーションはあります。


そのなかでもっとも有名な眠り薬は、ワインにアヘン、レタス、毒ニンジン、ヒヨス、クワの実、マンダラゲ、ツタの混合物を浸したもので、広く薬屋とか家庭の薬棚の上に置かれていました。


シェイクスピアは『オセロ』のなかでこの〈眠りのシロップ〉を記述しています。


・・・

けしの実も、マンドラゴーラも世界中の眠り薬も昨日までのお前のように、あれほど安らかには眠らせてくれないぞ。


・・・

人工の睡眠

痛みと不眠から逃れようとするところから医学が始まるとされています。


人生はある程度痛みであり悲しみです。


それから逃れる路は慎重に選ばなくてはなりません。


なぜならそれは死への路でもあるからです。


痛みや不眠を和らげる薬は死をもたらす薬でもあることは、オー・ヘンリーの短編『睡魔との戦い』を読むとよくわかるでしょう。


現在使われている羽毛 布団 販売のような眠り薬は、脳のどこでも一様に作用して脳の活動を低下させる、専門用語でいえば、非特異的な中枢神経系の抑制剤です。


こういう薬は、覚醒、痛み、悲しみのすべてを弱めてしまうのです。


ここでは、眠り薬は眠りに似た状態をつくりますが、本当の眠りではないことを述べてみましょう。


勿論眠り薬はある揚合には極めて有用なものであり、医学では不可欠なものです。


しかし、あくまでも諸刃の剣であることを忘れてはならないのです。


眠らせる能力は常に重要です。


時として、神聖なものとみなされていました。


ギリシャの神々のなかで余りカはありませんが、常に尊敬されていた神にヒプノス(眠りの神)がいます。


陸や海の上を飛び、ヒトにも神にも等しく眠りをもたらしていました。


通常、ケシの茎と角を持.た姿に描かれています。


その角から眠りの汁を人の上にたらすのです。


実際に、ケシの汁はおそらく最高の眠り薬であったと思われます。


そして、ケシ(特にその誘導体のモルフィンとへロイン)は、殆ど神として尊ばれてきましたし、今なお尊ばれています。

長寿村の実験では

ビルカバンバ村の無呼吸、ミオクローヌスの出現率の低い原因は何でしょうか。


第一に、この地には薬物乱用がないことです。


ビルカバンバ村には、1980年に病床数40の近代的病院が開設されたそうですが、医療の近代化はまだまだです。


このことが無呼吸を少なくしているのでしょう。


第ニに、ビルカバンバ村の気象条件が一定していることです。


年間を通して摂氏18~24度の気温、60%の湿度は、人体に対して過大なストレスとなりません。


さらに、海抜1500メートルの高地では大気圧が0・8気圧であり、呼吸循環系に適度の刺激となってその機能を高めていることが考えられます。


第三に、1日に6時間に亘る肉体労働や、丘陵地を歩くことによる身体運動が呼吸循環機能を高めていることも重要でしょう。


ビルカバンバ村の老人に、睡眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスが極めて少ないことが長寿の秘けつになっているのではないかと思われます。


羽毛 布団などはあまり関係ないのかもしれません。

睡眠と長寿の関係とは

従来の睡眠ポリグラフ記録は殆んどが病院とか睡眠実験室で行われたもので、自宅での記録ではありません。


日本人博士らは長寿村のコミュニティのなかで、できるだけ普段の生活をしているときの24時間のポリグラフ記録をすることにしました。


このためには、ポータブルの長時間記録用小型カセット・レコーダーを使います。


この装置を腰につけて、24時間の脳波、羽毛 ふとんでの就寝、心電図・筋電図・眼球運動、呼吸運動などを日常生活の妨げとならないで記録することができるのです。


教会の洗礼者名簿などで生年月日が確認できた80歳以上の老人20名について調べました。


24時間の全睡眠時間の平均は男性で7・4時間、女性で7・8時間でした。


ここでもアメリカ癌協会の調査結果とよく一致します。


ビルカバンバ村の老人の睡眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスはどうでしょうか。


80歳以上の老人8名(男性4名、女性4名)について調べましたが、そのうち1名だけが睡眠時無呼吸を示し(3.5%)、夜間ミオクローヌスは誰れにもみられなかったそうです。


アメリカの調査では・58歳から79歳までの24名のうち15名(62・5%)に睡眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスが認められるというから、ビルカバンバ村の老入はその出現率が著しく低いことになります。

長寿村の老人

エクアドルのビルカバンバ、パキスタンのフンザ、ロシアのコーカサスは世界3大長寿村として知られています。


このような長寿村の老人はかなり高齢になっても現役で働いていますから、老人の眠りについても実験室では得られない情報が得られるかも知れません。


幸いなことに、星薬科大学の大谷理事長は、エクアドル共和国のビルカバンバ村に病院を寄贈するなど村民の健康のために大変貢献されておられます。


大谷理事長の事業のお伝.いで、日本人博士らが現地に行き住民の睡眠調査を行っています。


ビルカバンバ村は、南緯4度にあり、海抜1500メートル(大気圧0.8気圧)で、年間平均気温が摂氏18~24度、湿度60%。


夏の上高地あたりを思い出してもらえばよいでしょうか。


このような気象条件が長寿に有利に作用しているのでしょう。


老人の睡眠ポリグラフ記録は最近盛んに行われるようになりましたが、すべて夜間睡眠だけであり、24時間のポリグラフ記録はまだ行われていません。


老人の眠りは幼児のように昼寝をする傾向がありますから、老人の眠りの実態を正確に把握するには24時間の眠りの分布を見る必要があるのです。

老人の睡眠

老人で、いびき、息詰まり、夜間の足のけいれん、不眠、昼間の強い眠気などがある揚合、唾眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスが疑われます。


こういう人たちの夜間睡眠を調べると、強い睡眠障害があり、1時間に5回以上覚醒するのです。


睡眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスは老人の主要な睡眠障害です。


60歳以上の老人の3分の1から2分の1の間にみられます。


睡眠時無呼吸と夜間ミオクローヌスは大変厄介な疾患です。


無呼吸が酸欠を起こし、これが心不全、卒中、高血圧などを起こすのです。


夜間ミオクローヌスのある人は夜間しばしば覚醒し、その結果夜が苦痛であり、昼間の疲労がとれず、眠気が強く、体力が低下します。


したがって頻繁な足のけいれんが窮極的に死亡率を高めることになりうるのです。


眠りの短い人、長い人に死亡率が高いのは、これらの睡眠時無呼吸か夜間ミオクローヌスが原因である可能性が極めて大きいといえます。

こんにちは

今日から睡眠日記をはじめます。


睡眠に関する自分なりの考えや知識、おすすめの快眠術や布団などをここで紹介していくつもりです。


どうぞお付き合いくださいませ。


みなさんはよく眠れていますか?


短い眠り、長い眠りと死亡率増加との間に相関があります。


眠りの生理学的過程が死亡率が高くなるメカニズムに密接に関係しているかも知れませんが、唾眠時無呼吸のような老人に多い障害が重要な役割を演じている可能性が大きいでしょう。


睡眠時無呼吸は老人にきわめて普通にみられます。


非常に印象的な例として、夢中遊行と夜間錯乱をもった2名の老紳士を紹介しましょう。


睡眠実験室でのポリグラフ記録では、両者とも頻繁に睡眠時無呼吸を示し、血液の酸素飽和度は著しく低下を示しています。


この結果起こる脳の酸欠が夜間錯乱を引き起こしていることは明らかです。


彼らは日中は全く正常で知的で理性的です。


彼らは眠り薬を飲むようになって、夜間錯乱が増悪しました。


これは、おそらく、眠り薬の呼吸抑制作用によって、無呼吸が延長し、酸欠が増大した結果でしょう。